人を使って成果を残すことの難しさを知る
うちの従業員はなかなか思い通りに動いてくれない。自発性に欠けている。指示されないと動かないなど、経営者にはいろいろな悩みがつきものです。今回はこれらの問題を一発で解決する方法をお伝えします。それは17年前に起こった私の実話です。
社員に何かを伝えるとき頭で話せば社員の頭に伝わります。そして心から話せば心に伝わり、魂から話せば、彼ら彼女らの魂に伝わります。
今から18年前、私が29歳のとき飲食店を10店舗統括していたころの話です。その頃の私は手前味噌ですが店長では負け知らず、売上をあげる、利益をあげることでは、社内で圧倒的なナンバー1でした。
過去の業績が買われ、20代後半で10店舗を統括する部長に昇格したのですが、私の一番の苦労はここからです。私が部長に就任してから半年間で14人いた社員のうち5人辞めてしまったのです。さらに業績をあげるためにいろいろ取り組みましたが統括している店舗の売上がまったくあがらない。唯一あげられたのは自分が店長兼任していた店舗のみです。
後半は9名で10店舗を回していたので、肉体的にも精神的にも本当ピークでした。そんなときに降格辞令をもらったのです。それも社長からは事前に伝えられたわけでなく、さらに一気に2階級降格で月の給与が一気に10万円減りました。
この悔しさは文字にすることができないものです。ちょうどその頃、家内と結婚して生活費も加算でいたころだったので、恥ずかしいやら、情けないやら、悔しいやら、気分ははちゃめちゃです。
失敗の原因を考えてみると、そのころの私は全店の店長をやろうとして、上から目線で、メンバーを力で動かそうとしていたかもしれません。実績をあげる答えを知っていたので(自分だけが実績をあげられるという意味で)、それをみんながやってくれれば実績をあげることは簡単だと思っていました。
でも、やってくれない。自らがプレーヤーとして成果を残すことと、人を使って成果を残すことが似ているようでまるで別世界だということを痛感したのです。
次のステップを邪魔したのは巨大な自尊心
そこから失意の2年間を過ごしました。そのときまで会社を辞めようとは一度も思ったことはなかったのですが、本気で辞めようと思ったのはこの時期です。
「俺に一言も相談しないで10万円の給料を下げられた」
「それも2階級降格ってあり得るか」
「社員が辞めたのもたまたま偶然が重なっただけだろう」
「こんな簡単なことができない社員が悪いんだ」
「こっちは休みなしに働いているのに」って、恥ずかしいくらい毎日、他人のせいにしていました。こんな日々を2年ほど過ごし、本当につまらない日々を過ごしたのです。
しかしこのままでは俺の人生終わっちゃうと思って、身銭で自己啓発セミナーに参加したり、経営の本や能力開発の本を買って読んだり、成功している同期の友人たちの話を聞いているとだんだん気づいたことがありました。
それは、実はずいぶん早目から気づいていたかもしれません。しかし自尊心が邪魔をしてそれを認めることができなかったのかもしれません。それを認めてしまうと自分が一気に崩れていくと思って。
その気づきとは「すべては主体変容である」ということです。主体変容とはよく松下幸之助さんが使われた言葉ですが、自分に気づいて自分を変えることによって相手を変えるという意味です。要するに相手を変えようとするのではなく、自分を変える。自分を変えることによって相手も変わっていく究極の真理です。
主体変容とは、自分が変わらないと状況はなにひとつ変わらないということです。落ちるところまで落ちてはじめて心から理解することができました。
そうか、うまくいかなかったのはすべて俺のせいだったのか?
はじめてそう実感したのです。
そう本気で思うようなってからいろいろな奇跡が起こりました。その後、自分の人生を一発で変わるようになった4泊5日の社外研修にいかせてもらったのも丁度そのころです。
研修後の私の変化は、
「みんながとても愛しい」
「今までなんて酷いことをいって傷つけてしまったんだろう」
「すべてを謝ろう」
「いままでのやり方を謝ろう」
「感謝の気持ちを正直に伝えよう」
「ありがとうを言葉で伝えよう」です。
それから事業部の社員が全員集まる会議でこのことを言葉で伝えました。また店舗では勇気がいましたけど、15歳の女の子のバイトにも謝りました。そしてお礼を伝えました。
これを統括する10店舗にやっていたのです。そしたら何が起きたと思いますか?
そしたら漫画やドラマや映画のような奇跡が起きたのです。
社内で起きているすべての原因が自分にある
当時、1店舗でも前年売上110%を超えるのは大変だった時代に、私が統括する10店舗のすべて店舗がそこから13ヶ月連続して110%を超えていたったのです。信じられますか? もちろん戦略的戦術的に動いたことはありますが、いままではそれらをやってもピクリともしかった売上が嘘のように一気によくなっていたのです。
今までの私の常識では考えられない出来事でした。後に知ったことですが船井幸雄さんも同じようなことを言っていました。経営者が成功するとき、ゆるやかにカーブを描きながら成功していくのではなく、ある分岐点をすぎると一気に成功していく。その分岐点こそが成功へのはじめ一歩だと・・・
その一歩のことを船井幸雄さんは自責他責という言葉をつかって説明していました。つまり、うまくいかなかったのは他人ではなく、すべて自分に原因があると、心底わかってそれを外に発信して行動し始めたときから成功がはじまると言うことです。
うちの従業員はなかなか思い通りに動いてくれない。自発性に欠けている。指示されないと動かないなど、いろいろな悩みがあると思います。これら社内で起きている原因のすべては社長であるあなたに原因があるのです。それらをすべて受け止め、いまに感謝したときにはじめて奇跡は起きるのです。
それが22年間、店舗ビジネスに関わらせてもらった私の究極の悟りなのです。
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