経営は経営学ではなく心理学だということ
戦略戦術を機能させるために大事なのは、戦闘力です。
戦闘力とは、戦略戦術を形にする現場の実働部隊のスキルです。
そして、この現場の実働部隊は機械ではなく人間なので、リーダーによって大きく差がでます。
しかしそれが面白くもあり、また難しくもあり、やりがいを持てるのも事実です。
この人を使って成果をあげるために求められる能力があります。
それはお客様も人間ですし、働くスタッフも人間なので、人間という動物が何なのかを深く知るという能力です。
だから私は常々言っていることが、経営は経営学ではなく心理学だということ。
人であるお客様を感動させるために、やはり人である従業員のマインドを知ることが大事です。
つまり彼ら彼女らのやる気やモチベーションといった心の燃料を常に満たしてあげることが人を使って成果を出していくための必須条件となるのです。
この燃料を貯めるタンクを私は「心のツボ」と呼び、このツボを満たしてあげることが現在の経営の根幹だと思っています。
「心のツボ」をどうやって満たすのか?
「心のツボ」は、多店舗化に向かって社員、アルバイトが自主的に行動に移すための心の燃料タンクです。
5店舗化の壁を破れない社長は、嘘みたいな話ですが、スタッフを人間だと気がついていません。(笑)
自虐ネタですが、私も30になるまでスタッフを人間だと思っていませんでした。(笑)
だからうまくいかなかったのです。
人をつかって成果を出すリーダーは皆、彼ら彼女らの「心のつぼ」を満たすことが上手です。
もちろんそれを意識しているか、無意識的なのかはわかりませんが、共通して言えることは彼らの部下は皆、生き生きと働いています。
部下を人だと思っていなかった20代のころの私は、負のスパイラルから抜け出せないで、もがき苦しんでいました。
ようやく育てたと思った途端、私の部下は途中で辞表を出したり、突然辞めたりしました。
どんなに愛情をもって言い続けても、私の部下は私をうるさがり、私を受け入れてくれませんでした。
人を動かすコツは相手の自己重要感を満たすこと
30代に入り、どうすれば人の「心のつぼ」を満たしていけるか研究しはじめました。
そのなかで「たらいの水」という例話を師匠に教えてもらいました。
「たらいの水の話」とは金次郎(二宮尊徳)の教えで有名な話で、水を自分のほうに引き寄せようとすると向こうに逃げてしまうけれども、相手にあげようと押してやれば自分のほうに戻ってくる。だから先に相手に水を与えなければならないという話です。
これを部下教育に置き換えるなら、部下が本当に欲しているベネフィット(メリット)を先に与えれば、やがて彼ら彼女らはこちらのベネフィトに応えてくれるというものです。
あと師匠は私にデール・カーネギーの「人を動かす」を10回読むように指導してくれました。
この本のなかに書かれている一説にとても印象深いフレーズがあります。
ウィリアム・ジェームズは、「人間の持つ性情のうちでもっとも強いものは、他人に認められることを渇望する気持ちである」という。ここでジャームズが、希望とか要望とか待望とかという、なまぬるい言葉を使わず、あえて「渇望する」と言っていることに注目されたい、と……
つまり「心のつぼ」を満たす原理原則は、彼ら彼女らに自己重要感を持たせるということでした。
それからの私は部下の承認欲求を満たす言葉を意識的に投げかけることによって、彼ら彼女らの心の燃料タンクを意図的に満たすことができるようになったのです。
それらをキッカケにして、徐々にではありますが、人を使って成果を出せるようになっていたのです。
人をつかって成果を出すリーダーは、常に部下の「心のつぼ」を意識する。
これが22年間店舗ビジネス業界で仕事をしてきた私の結論です。
加納聖士
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